2022/05/17
抗菌と滅菌の意味を混同している人は少なくありません。
しかしそもそも抗菌と滅菌とでは対象相手が違います。
そのため抗菌と滅菌の違いを理解していないと、狙う効果に合っていない商品を選んでしまう可能性が高くなるのです。
素材コーティングをする際は、抗菌に対応する商品なのかもしくは滅菌に対応する商品なのかを確認して希望に沿う商品を選びましょう。
目次
抗菌と滅菌の定義はまったく違う
抗菌と滅菌は言葉の響きがよく似ています。
しかし意味はまったく異なるため、それぞれの意味を理解して区別することが大切です。
以下に抗菌と滅菌の定義をまとめました。
- 抗菌…製品の表面上における細菌の増殖を抑制すること
- 滅菌…微生物を完全に死滅させること
引用URL:https://www.kohkin.net/antibiotic.html
抗菌は細菌を抑制し、長時間増やさないようにすることを指します。
一方滅菌はすべての微生物を完全に死滅させることです。
また細菌を対象とする抗菌に対して、滅菌はウイルスや細菌を含むすべての微生物を対象としています。
抗菌と滅菌、抗ウイルスの違い
先の項目では抗菌と滅菌の違いを紹介しましたが、抗菌と抗ウイルスも混同されることが少なくありません。
抗菌と滅菌とでは定義が異なるように、抗菌と滅菌、抗ウイルスも定義がまったく違います。
以下で抗ウイルスの定義を確認しましょう。
- 抗ウイルス…製品上の特定のウイルスの数を減少させること
参考元URL:https://www.kohkin.net/
一見すると細菌の増殖を防ぐ抗菌とよく似ているように思えます。
しかしそもそも細菌とウイルスとでは性質が異なります。
細菌は自ら増殖するのに対し、ウイルスは細胞の中に入り込んで増殖するのです。
生物の細胞に入り込まなければ増殖しないため、抗ウイルス商品は細胞に入り込む機能を不活性化させます。
抗菌と抗ウイルスは細菌やウイルスの増殖を抑えるという働きは似ているものの、対象としている相手はまったく異なるのです。
またすべての微生物を殺す滅菌とも、定義がまったく違うことがわかるでしょう。
殺菌や除菌も定義がそれぞれ異なる
殺菌や除菌の定義についても見ていきましょう。
特に滅菌と殺菌、除菌は混同しやすいため、それぞれの意味の違いをよく確認しておくことが大切です。
以下に殺菌と除菌の定義をまとめました。
- 滅菌…微生物を完全に死滅させること
- 殺菌…細菌などの微生物を死滅させること
- 除菌…ある物質又は限られた空間より微生物を除去すること
引用URL:https://www.kohkin.net/antibiotic.html
上記の定義を見るとわかるように、特に滅菌と殺菌は定義がほぼ同じように見えます。
しかし滅菌はすべての微生物を対象とするのに対し、殺菌は細菌を対象としています。
そのため滅菌と殺菌もまた大きく異なるのです。
一方除菌は今ある細菌を取り除くことです。
細菌の増殖を抑える抗菌と混同されやすいですが、細菌を取り除く働きと増殖を抑える働きとでは内容が大きく異なります。
抗菌と滅菌、殺菌の試験基準について
以下を確認するとわかるように、試験基準に関しては抗菌と滅菌は似ています。
- 抗菌…細菌の増殖割合が100万分の1以下
- 滅菌…微生物の生存確率が100万分の1以下
- 殺菌…殺菌の程度が決まっていない
抗菌と滅菌はどちらも細菌や微生物の増殖割合、もしくは生存確率が100分の1の商品であれば、抗菌や滅菌と提示できます。
問題は滅菌と殺菌の試験基準の違いです。
どちらも微生物や細菌を死滅させるという意味を持ちますが、殺菌には滅菌のような試験基準の明確な決まりはありません。
つまりほんの少しの細菌を死滅させるだけでも、殺菌商品と提示することができるのです。
この点は安心感に直結するため、よく把握しておくことが大切です。
用語の意味を理解しておくことが大切
素材コーティングの商品を選ぶ際は抗菌と滅菌だけでなく、抗ウイルスや殺菌などの似ている言葉の違いについてもよく理解しておくことが大切です。
いずれも感染症の予防に役立ちますが、期待できる効果はまったく違います。
抗菌と滅菌の区別については、次のような考え方を参考にするのも一つの方法です。
- 新しい細菌を増やしたくない場合は抗菌、今ある細菌やウイルスをやっつけたい場合は滅菌
- 特定の感染症予防は抗菌、幅広い感染症対策をしたい場合は滅菌など
抗菌が可能な商品だからと言って、滅菌までできるわけではありません。
むしろ抗菌可能な商品と滅菌可能な商品は、まったく違うことがほとんどです。
ただし商品には期待できる効果が必ず記載されているため、言葉の意味を理解していれば希望に合った商品を選択できます。
抗菌コーティングはSIAAマークを参考に
抗菌や滅菌効果が期待できる商品を見つけても、信頼できる商品でなければ意味がありません。
その信頼性を見極める上で役立つのがSIAAマークです。
SIAAマークは、抗菌製品技術評論会によるルールをクリアしている商品のみ提示を認められています。
SIAAマークは以下の3つのマークに区分されます。
- 抗菌マーク
- 抗ウイルスマーク
- 抗カビマーク
抗菌や抗ウイルス、防カビ商品のメーカーや試験機関などが作ったルールをクリアした商品のみ、上記のシンボルマークが与えられます。
そのため消費者は一定の安心感を得られます。
ただし審査対象となるのは上記の3つの項目のみです。
滅菌に役立つ商品は試験結果の提示の有無を確認
では滅菌効果が期待できる商品を選ぶときは、どのような点を確認すれば安心感を持てるのでしょうか?
信頼性の高い商品を見極める上で役立つのが、複数の試験結果を提示しているか否かです。
例えば次のような内容が挙げられます。
- 生体適合性試験
- コーティングの耐性試験
生体適合試験に関しては、ISO10993(GLP)に合格済などと提示されていることがほとんどです。
そのため消費者は生体適合性試験への合格の有無を簡単に確認できます。
商品の耐性試験については提示されていないケースも多いです。
試験結果を提示していないからと言って、クオリティが低い商品だというわけではありません。
しかし安心感を得たいのならば、商品の試験内容を詳細に提示している商品を選ぶのが望ましいです。
抗菌や滅菌に役立つ商品の一例
では実際に抗菌や滅菌に役立つ素材コーティングの一部を以下で紹介していきます。
- 抗菌…家具や壁材などに使える抗菌塗料・抗菌スプレー
- 滅菌…ゼッフル MZ
それぞれ食事用のテーブルや医療機器などの、人の身体に触れる素材にも安心して使用できるコーティング商品です。
しかし両者では特徴が異なります。
信頼性につながるSIAAマークや試験結果の提示の有無などを含めた商品の特徴を、次の項目で紹介していきます。
使う場所を選ばない!自社開発の抗菌塗料
SIAA登録製品として認定されている商品には、抗菌塗料の名前がついているケースがほとんどです。
しかし会社によっては商品名を記載していないこともあります。
ただし会員証明書と一緒にSIAA抗菌マークが提示されていたり、工事事例が紹介されていたりする場合は一定の安心感を持てます。
SIAAの抗菌マークがついている塗料には主に次のような特徴があります。
- 外壁やテーブルに使用できる
- 木製の家具にも使用可能
テーブルやドアノブなどの手が触れる部分はすべてコーティングできるケースが多いです。
そのため飲食店や企業も安心して感染症対策ができます。
また飲食店などでは頻繁にテーブルや椅子などを拭くために、抗菌スプレーを合わせて使用するケースもあります。
医療用の消毒に最適なゼッフル MZ
ゼッフル MZは滅菌効果を狙うコーティング商品です。
フッ素コーティングの材料を使用して細かい部分までコーティングし、滅菌していきます。
会社のホームページには生体適合性試験に合格していることや、商品の耐性試験の結果が詳細に提示されています。
そのため安心感の高い商品ですが、対象となるのは主に医療施設です。
一般向けの滅菌アイテムは、スプレー式の商品が利用されることが多いです。
ドラッグストアやスーパーなどでも手に入るため、個人でも多く利用されています。
また低温の過酸化水素を発生させて微生物を滅菌する滅菌機もあります。
滅菌を狙う素材コーティングは今のところほとんどないため、飲食店や企業などではスプレーや滅菌機能のある装置を利用するのが有効です。
まとめ
細菌の増殖を抑制するのが抗菌、細菌を含む微生物を死滅させるのが滅菌です。
混同されやすい抗ウイルスや殺菌との違いについても理解しておきましょう。
特に抗菌と抗ウイルス、滅菌と殺菌は同じだと勘違いされやすいです。
とは言え素材コーティング用の商品は、抗菌や抗ウイルスの両方に対応しているケースが多いです。
SIAAマークの有無を確認して、信頼できる商品を選びましょう。
一方で滅菌を狙うための素材コーティング材はほとんどありません。
スプレー式の滅菌アイテムや滅菌装置などの利用を検討しましょう。
抗菌用の素材コーティングや滅菌装置で気になる商品がある場合は、特徴や費用について直接会社に問い合わせるのがおすすめです。